源泉税還付手続き:税理士の苦悩

2013年05月19日
樫原明宏

長年ハワイの不動産の転売手続きをさせていただいておりますと、源泉税の還付についてお客様だけでなく、手続きを行なっている税理士の方からも、役所相手の大変さをお聞きします。複数のハワイの税理士様にお会いした時に、お聞きした日本の常識が通じない共通の苦悩をご案内し、還付手続きの現状をご報告申いたします。

アメリカの確定申告は毎年1月から開始されます。通常、翌年の秋口までには還付されますが、中には待っていても届かい場合が多くございます。これは日本では常識のお役所の対応が、アメリカでは通用しないことに起因している場合が多いようです。予算削減で常時人員不足である米国歳入庁の評判は悪いです。



ミスのある還付手続きは「放置される」

還付されない場合の大半のケースは税理士の書類記載ミスではなく、米国歳入庁側のミスに起因しています。多量の還付依頼が世界中から一箇所に届きますので、常に役所の業務が飽和状態となっています。完全な書類とデータベースが一致していないと還付されないのは当然ですが、不備のある還付手続きは、税理士に修正を指摘することもなく放置されます。売主様から還付金が届かないことを聞いて始めて判明しているのが現状です。




具体的なミスとは?
源泉税還付

様々な理由により還付手続きが中断され放置されますが、主に以下のようなケースがございます。

・還付申請者(売主)の住所を米国歳入庁のデータベースに入力する時、文字数に入力制限があり、文字数オーバーの場合、完全な住所が入力できずに途中でカットされる。当然、還付金小切手が郵送されても届かず返送され、そのまま放置されます。

・申請の書類、小切手が紛失になっている。歳入庁内で書類や還付小切手が行方不明になっているケースもございます。そのまま放置されます。

・英語圏では馴染みのない母音が多い日本人の名前のスペルは入力ミスの原因となり、頻度も多くなります。スペルミス入力は小切手の宛名のスペル間違いで銀行で換金が拒否されます。小切手を歳入庁に返信しても行方不明になり、再発行依頼となったケースもあります。

・納税番号と名前のマッチンッグが間違って処理され、他人の還付申請となっている。

・毎年1月から還付申請が可能ですが、税理士が記入する申請用紙が出来上がるのが年により遅れ2月となり、その場合は還付も遅延しております。



マンパワーや労働習慣による処理の遅れに起因する事例
源泉税還付2

・還付金の問合せは電話のみとなり、問合わせが入る時期も同じなので、電話が集中し30分から1時間待たされる。 電話先は東部標準時でハワイからの電話に時差がありかかりづらい。

・担当者と話せても、データベースの情報も見るだけで、何が問題で還付されていないのか原因が特定しにくい。

・原因が判明し修正し、前に修正頼んだ役所の相手の名前だしても、日本では当たり前の仕事の引き続きは、殆どなされないので、前の担当者に聞くこともなく、データベースに記載されていることしか対応処理しない。

・世界中から問い合わせが来ており、1つ1つの作業が遅く、民間企業で処理される事務処理の5倍くらいの時間がかかる。例えばFAXした委任状を入力するのに3日かかるので4日後に電話するように案内される。電話するとまた30分から1時間待たされ、出た相手に、最初から説明する必要がある。



還付される時期について

上記の例は、もし、還付されない場合、どのようなことが原因なのかをご案内申し上げました。なお、還付申請は、売買の契約した年でなく、売買手続が全て完了した時点の年の翌年に還付申請します。秋までに還付されない場合は、税理士にご確認されることをお薦めいたします。お問合せは弊社では判りませんので税理士に直接お問合せください。 日本と異なり税理士費用は申請だけの費用です。税理士に追跡調査が必要な場合は、追加費用を支払って調査依頼することも可能です。よって還付申請をお考えの場合は、納税額と税理士費用を勘案して還付申請するかどうか判断されることをおすすめします。タイムシェアの場合は、金額が小さいため多くの場合、還付申請される方はいらっしゃいません。


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